出演
女神さま 神さま コロボックルたち

◇女神の泉

のどかな昼下がり。
女神はいつものように泉の前に佇んでいた。
突如、眩い光が辺りを包む。


女神 「まぁ、貴方がここへいらっしゃるなんて珍しいですわね」

神  「たまには違う景色を見るのも悪くなかろうと思ってな。
    小さいやつらはどうした?」


神はあたりを見回し、コロボックル達が居ないことを尋ねる。


女神 「ピクニックに行くと言って今朝は早くから出かけましたわ」

神  「ふむ、…体調はもう良いのか?」

女神 「ええ、すっかり…貴方とフィン、それに何よりあの子のおかげですわ」


女神は優しく微笑み、感謝の気持ちをそこに居ない皆にも向ける。


神  「フン、最初から我を頼ればよいものを、回りくどい事をする」


鬱陶しそうな顔で神は腕組みをした。


女神 「貴方は昔から、人の世界があまりお好きではありませんでしたから」

神  「好き嫌いの問題ではない、関心が無いだけだ。
    むしろおまえは関心が有りすぎる。自然がどうかなってもそれは全て奴らの
    自業自得というものであろう」

女神 「…………」

神  「災害がきたといっては大騒ぎして喚き、神を罵倒する。争い事に熱心で
    他人を欺くことを何とも思わぬようなくだらぬ人間の為に泣いたり
    心を痛めたり、見てるこちらが腹立たしいわ」

女神 「…………」

神  「…怒ったか」

女神 「いいえ、それくらいのことで怒ったりしません」


女神はそう言いながらもツンと顔を背けたまま答える。


神  「ではなぜ顔を背ける。こちらを向け」

女神 「嫌です」

神  「おまえはいつでも人間の味方なのだな。全く…だから」

女神 「……?」

神  「何でもない。さてうるさいのが来ないうちに帰るとするか」

女神 「人は…愚かな行いをすることもあります。失敗したり挫けたり争ったりすることもあります。
    …けれど、間違いに気付き、やり直して目の前の困難を必ず乗り越える力を
    持っています。彼らの力は私たち神などよりよほど力があると思う時があります。
    そんな彼らを愛しく思うのは別に恥ずかしい事ではありません」

神  「我に説教するか」

女神 「ただの世間話ですわ。神の座にもいろんな人間たちが訪れるようになって
    貴方も退屈せずにいると見えますけれど」

神  「フン」


顔をしかめたまま神が姿を消すと、女神はゆっくりと瞳を閉じた。
遠くからざわめきと共にコロボックル達が帰ってくる。
小さな手にはキノコや木の実、花などがあった。


アラン 「女神さま〜♪ ただいまー、おみやげ持ってきたよ〜!」

ベ ン 「ピクニックに行ったところでたくさん見つけたのです」

コロン 「ホラ、これ女神さまが好きな花やろ♪」

エッジ 「女神さま、さみしくなかった〜?」

女神 「ええ、みんなのおみやげ話を楽しみにしていましたよ」

ダ ナ 「このキノコで今夜のシチューを作るの〜ぅ♪」

女神 「それは楽しみですね。
    …………そうだわ、
    神さまにもおすそわけしてはどうかしら?」

アラン 「神さまのとこ? 行っても怒られないかな?」

女神 「ええ、きっと喜びますよ。うふふ」


出来上がったキノコのシチューを持って出かけるコロボックルを女神は優しく見送る。
それから、ひだまりの心地よさに再びそっと瞳を閉じた。



END