出演
ユ イ マ オ ビビアン バーン

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◇タムタムの森

薄暗い森の中、辺りを見回しながら不安そうに歩く子供達。


マ オ  「…ここって、さっきも通らなかった?」
ビビアン「そんな気がしますわ」
バーン 「やっぱり迷ったようですね」
ユ イ  「…うう、おなか空いてきたよぅ〜」
ビビアン「もとはと言えばユイさんがタムタムの森に行きたいと言ったからでしょう」
ユ イ  「だって、とっても珍しくて美味しい幻のキノコがあるって言うから…」
マ オ  「ごめんね、ぼくも森の奥の沼にヌシがいるって聞いて…」
バーン 「今は責任転嫁してる場合ではありませんよ」
ビビアン「そうでしたわ、ごめんなさい」
ユ イ  「えーと、そうだ! みんなでチョコ食べよう♪ それで元気だそう!」


歩き疲れた子供達、座ってチョコレートを分け合い食べる。


バーン 「冷静に状況をまとめよう。
      僕らのつけてきた目印が消えてしまったのはなぜか?」
ユ イ  「ユイとマオ君のパンくずは小鳥が食べちゃった…のかな?」
マ オ  「しっぱいだったね…」
バーン 「僕はピカピカに磨いた小石を置いてきたけど、それも無くなった」
ビビアン「私はわざわざ木の枝にリボンを結んできたんですのよ。
      それも無くなってしまうなんて…」


不安な空気があたりに漂い、みな口ごもる。


マ オ  「……やっぱり、魔女がぼく達を迷わせるために消したのかな?」
バーン  「魔女の噂なんてしょせん子供を騙す為に大人が考えた
      作り話だと思うのですが」
ビビアン「だから私は魔女など居ないという証明をしようとついてきたのよ」
バーン 「でも、ここがただの森じゃないのは確かですね。
      ほら、持ってきた磁石がフラフラして方向が定まりません」
ユ イ  「うん、木がいっぱいで空もよく見えないもんね」


みなが空を見上げた時、バサバサッ!と鳥の羽ばたく音がした。
藪から出てきた人影に驚いて逃げ出す子供達。



ユ イ  「やーーーーっ!」
マ オ  「わーーーーっ!」
ビビアン「きゃああーーーーっ!」


マ オ  「こ、こわかった〜」
ユ イ  「まじょ! まじょだよっ! ホントにいたんだ!」
ビビアン「ち、ちがいますわ! こわいと思っていたから何かを見間違えて…」
バーン 「確かめに戻ろうか?」
ビビアン「…いえ、結構ですわ。それより森を出る道を探しましょう」


ユイ、何かに気が付いたように駆け出す。
目を閉じて鼻をくんくんと鳴らす。



ユ イ  「…ケーキの匂いがする!」
マ オ  「え? しないよ?」
ビビアン「ユイさんたら、お腹が空くあまり幻覚でなく幻嗅が…」
ユ イ  「ううん、絶対そうっ! こっちっ!」
バーン 「ユイさん、走っちゃダメです!」


確信を持って走り出すユイの後を追いかける子供達。
人影が手を振っているのが見える。



ユ イ  「あっ、魔法使いさんだ!」
魔法使い「……みんな無事? 良かった。…大人たち心配してる」
マ オ  「…ごめんなさい」
魔法使い「……今夜はたっぷりお説教……されるね
      えーと、……これ、おやつ。…あげる」
ユ イ  「わぁ、ケーキだ! ありがとう♪」
ビビアン「…はぁ、家に帰るのがゆううつですわ」


暗い面持ちでため息を吐くビビアン。
魔法使いに見送られ森を出て行く子供たち。
森を振り返るバーン。


バーン 「あれは、本当に魔女だったのかな…?」


日の沈む空を背景に静かなタムタムの森を後にする人々。


すっかり暗くなった森の中、佇む魔法使いに魔女がそっと近づく。


魔法使い「……自分で渡せばいいのに」
魔女さま「渡そうと思ったら逃げられたのよ!」
魔法使い「……君が目印を拾い集めたりするから」
魔女さま「珍しいものが落ちてるな〜って、つい…
      あの子達の目印だなんて知らなかったのよ!
      だからお詫びにケーキを持ってきたのに…
      もうっ帰る!」


幾分寂しげに目を伏せたのち、怒って怒鳴りながらその場から去っていく魔女。


魔法使い「………やれやれ」


魔法使いの小さな呟きは微かな笑みと共に森の中に吸い込まれて行った。
こうした魔女のしでかす騒ぎを収めるのは毎度、自分の役目なのだと
諦めにも似た溜め息混じりの笑みであった。



END